MARKETING
SOLUTION
マーケティング事例
CASE STUDY
KDDI×ARISE
analyticsで実現
顧客体験価値を最大化する
データドリブンマーケティングとは
※この記事は2021年2月25日にJBpressに掲載されたものを許可を得て転載しています。
所属部署名は当時のものとなります。
「au」や「UQ」といったブランドで携帯電話事業を展開するKDDIでは、多種多様なデータを活用し顧客理解を深め、体験価値を最大化する「データドリブンマーケティング」に注力している。そのパートナーになっているのが、KDDIのグループ会社で300人ものデータサイエンティストが活躍するARISE analyticsである。両社はこれまでどのような活動に取り組み、どのような成果を上げてきたのか。今後の展開も含めて話を聞いた。
データ分析企業であるARISE analyticsと共に顧客体験価値の最大化を
なぜデータドリブンマーケティングに取り組むようになったのでしょうか。
白井 大介氏(以下、白井) auではカスタマーファーストを標榜しています。データドリブンマーケティングはそれを実現する手段なのです。その背景にあるのはデジタルとフィジカルの融合です。
スマホでニュースを読むのが当たり前になったように、生活はデジタル中心にシフトしつつあります。例えばニュースのようにデジタルで完結するサービスから志向性を把握するだけではなく、au PAYでは決済データからどの店で何を購入したかなど顧客のフィジカルな行動が把握できます。データによってデジタル・フィジカル両面で顧客理解を深めることができるのです。
消費者がデジタルに入るきっかけは多くの場合スマホです。その接点を提供している当社だからこそ、データを活用してもっとワクワクする体験価値をお客様に提供できると考えています。
山口 求氏(以下、山口) 通信というインフラを使ってどんな楽しい世界を届けられるのか。常にそうした視点で取り組んでいます。データから個々のお客様の関心事を知り、それに合ったエンターテイメントをお届けし、お得に使っていただけるプランをご用意することを日々目指しています。
その活動のパートナーがARISE analyticsということですね。
白井 ARISE analyticsは当社とアクセンチュアが出資して設立したグループ企業ではありますが、300名を超えるデータサイエンティストが所属していて、データ分析企業としては日本で最大規模であり、高い技術力を有しています。そして当社には日本有数の質と量を誇るデータがあります。この2つを掛け合わせれば、これまで捉えきれなかったお客様の課題やニーズを捉えて、新たな価値を持つサービスを生み出すことができると考えています。
瀧内 孝輝氏(以下、瀧内) KDDI様と当社とは常にワンチームとして活動しています。分析業務を発注する側と受託する側という関係ではありません。まず課題があって、それをどう解決するかを一緒に議論し、お互いのケイパビリティに応じて役割を分担しています。
白井 お客様にとってより身近な会社になるために、課題を洗い出してはプロジェクト化し、ARISE analyticsと一緒に具体化するということを繰り返してきました。
「お客様のエンゲージメント」を可視化しデータに基づいて施策を改善させた
これまでの取り組みについて教えてください。
白井 ARISE analyticsと最初に取り組んだのがお客様のエンゲージメントを高めるというプロジェクトでした。「エンゲージメントを高める」という言葉は様々な文脈で使われますが、簡単に言うと満足度が高いお客様を増やすことを指します。
エンゲージメントを可視化するために作り出したのが「エンゲージメントスコア」です。お客様の満足度が高ければ当社のサービスを使い続けてくれます。そうしたお客様を増やす施策を打つためにも、まずエンゲージメントを可視化することが必要だったのです。
具体的にどんな仕組みを作ったのでしょうか。
瀧内 お客様一人一人のエンゲージメントを測るために、まずはその指標が持つべき要件の整理から始め、「Capturable」「Understandable」「Actionable」という3つの要素を軸として検討を進めました。これら3要素を満たす指標として選んだのが「行動指標」です。
行動指標はお客様の行動に基づく指標なのですべてのお客様に紐づく指標として取得できますし(Capturable)、お客様がどういった行動を取っているかも直観的に理解でき(Understandable)、さらにそのお客様の行動を促すためのアクションの検討にも直結できます(Actionable)。
その後は140種類ほど候補のあった行動指標と結果指標との関連性を検証し、結果指標に対する寄与度が高かった3つの決済に係わる行動指標からエンゲージメントスコアを構築することにしました。
山口 このエンゲージメントスコアを社内共通の指標として利活用してもらうために、社員向けのデータベースにもエンゲージメントスコアを連携させ、各種施策の改善に活用するように働きかけてきました。また、社内向けの説明会を開催したり、教育プログラムを用意したりすることで、データ分析に対するハードルを下げる試みも併せて推進してきました。
特に教育プログラムは好評で、社内にもデータ分析できる人材が育成できました。これもARISE analyticsとのシナジー効果です。
レコメンドエンジンを活用してマーケティングを合理化する
お客様のエンゲージメントを高めるためにどんな取り組みをしてきたのでしょうか。
白井 お客様に対して事業目線での一方的なアプローチをしてしまうと嫌われてしまいます。そこでお客様にとって最も価値のあるサービスやキャンペーンなどを訴求できるような仕組みを構築したいと考えました。具体的には、KDDIが持つ「My au」などのアプリの自社広告枠での露出やPUSH配信を実施して、サービスの認知拡大・利用促進などを目的とした様々なオファー(特典など)を提供しています。
瀧内 それを実現するために、KDDI様と共に「Single Brain」というレコメンドエンジンを開発しました。「Single Brain」はお客様の年齢・性別といった属性情報や過去のオファーへの反応履歴などを学習することで、お客様一人一人がオファーを配信された場合に何%の確率でクリックされるかを事前に予測しています。この予測値を活用し、お客様ごとに最適なオファーを選び出して配信するまでを自動で実行できる「マーケティングオートメーション」を実現しています。
瀧内 マーケティングオートメーションを実現したことによって、導入前に比べて配信内容のCTR(クリック率)が3倍になり、CVR(コンバージョン率:サービスへの申込など)も1.5倍に向上しました。また、Single Brainでは、機械学習と予測を含めて30分でターゲットとなる顧客リストが作成できるなど、人では実現不可能な作業実行・大幅な工数削減という面でも効果が出ています。
山口 マーケティングオートメーションを実現した結果、My auという看板アプリの価値向上にもつながったことが各種指標にも表れています。この成功体験を通じて、お客様にとって良いものを提供しようと社員の意識も変わってきました。KDDIのデータドリブンマーケティングが目指すところはお客様に心地よさを提供することだと思っています。
今後は経営層、企画担当者に向けたマーケティング全体の支援も展開
次はどんな展開をお考えでしょうか。
山口 マーケティング全体をシステムで支援する「Marketing Management System」を構築しようとしています。経営層に対してはマーケティング活動の効果を事前に予測し、経営判断を支援します。企画担当者に対してはマーケティング施策のパイプライン設計、効果シミュレーション、PDCAサイクルづくりを支援します。
ARISE analyticsとタッグを組んで、AIによるシミュレーションを取り入れていこうと考えています。そうすることでマーケターのスキルに依存することなく、最適な施策が打てるようになります。この春から本格的に取り組み、2021年度中に実現したいと考えています。
白井 経営者向けの判断支援と企画者の立案支援をひとつにまとめ、お客様のマーケティング分野の課題解決に貢献できるものを目指します。誰にとっても便利に使えるものにすることを重視しています。
データドリブンマーケティングを成功させるためのポイントはどこにあるのでしょうか。
山口 当社が考えるポイントは4つあって「人材教育」「組織」「業務プロセス」、そして「システム」だと考えています。
組織は人材で構成されていますし、ITを使いこなし戦略を立案するのも人材であるため「人材教育」は重視しています。当社では、ARISE analyticsによるデータサイエンティスト教育プログラムの採用やデータ活用による社内貢献を人事制度にも紐づけて評価するなど人材のレベルアップを積極的に支援しています。
2点目の「組織」については、一部署の小さな取り組みで終わるのではなく、全社でのデータ活用を促進し経営判断を支援する組織としての取り組みにしていくことが必要だと考えています。
3点目は「業務プロセス」です。データをもとにPDCAサイクルが高速で回せるよう業務プロセスを見直すことが重要です。
4点目は、「システム」です。マンパワーでやってしまうと属人化してしまうことも多いので、データ活用を支援するソリューション・環境を整えることでマーケティングのデータドリブン化、全体のレベルアップが促進されると考えています。
瀧内 データの利活用を進めるためには、もちろんデータや分析基盤といったハード面の整備が前提となりますが、人材教育や業務プロセスの変革といったソフト面の強化も欠かせません。分析担当者だけがデータを見るのではなく、経営層やマーケターも含めた全社員が日常的にデータを見ながら仕事を進めるという状態が、データドリブン経営を実現する上で目指す理想の姿だと考えています。
データ活用のノウハウを積極的に社会に還元していく
山本 隆広氏 当社の事業戦略は「通信とライフデザインの融合」で、これにより個人のお客様にワクワクする体験価値を提供していこうとしています。そこではデータの活用が不可欠です。ビッグデータを活用したARISE analyticsとの取り組みは、サービスの提供を通じてauをもっと好きになってもらう活動であり、大きな成果を上げてきました。
今後はこのノウハウを社会に積極的に還元していきます。コロナ禍でますますOMO(オンラインとオフラインの融合)が重要視される中で、当社の保有するデータと培ってきたデータドリブンマーケティングのノウハウをあらゆる場面で活かしていただきたいと考えています。
また、今年度は5G事業を立ち上げました。今後はこれを軸に、大容量、低遅延のインフラ上でオンラインとリアルをつなぐことに企業や自治体と一緒に取り組み、社会課題の解決や地方創生のために当社とARISE analyticsのケイパビリティを提供していきます。
KDDI株式会社
住所:東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号 ガーデンエアタワーURL:https://www.kddi.com/
株式会社ARISE analytics
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1URL:https://www.ariseanalytics.com/