データ分析を通じて新規会員獲得のPDCAサイクルを最適化 会員数100万人超えを達成した「auウェルネス」のデータ分析の手法とは?

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※本記事の内容、所属部署名などは2024年9月の取材時点のものです。

国内を代表する通信事業者として知られるKDDI株式会社は、次なる成長領域としてヘルスケア市場の開拓に力を入れています。そこでの新たな顧客とのタッチポイントとして位置付けられているのが、スマホで手軽に利用できるトータルヘルスケアアプリ「auウェルネス」です。

その新規会員獲得を加速させるべく、KDDIはARISE analyticsに支援を要請。すでに会員数が100万人を突破するなど顧客基盤が着実に拡大する中で、両社はどのような施策に取り組み、成果を生み出してきたのか。ヘルスケア市場における今後の事業展望も含めて、ARISE analyticsの担当者を交えて話を聞きました。

 

  • 石川 洋平 氏

    KDDI株式会社

    パーソナル事業本部
    サービス・商品本部
    ヘルスケア事業推進部
    サービス企画グループ グループリーダー

  • 高久 由佳 氏

    KDDI株式会社

    パーソナル事業本部
    サービス・商品本部
    ヘルスケア事業推進部
    サービス企画グループ コアスタッフ

(ARISE analyticsからの参加者)

  • 下田 敬太

    株式会社ARISE analytics

    Innovation & Growth Division, Life Transformation Unit, HC Biz Team, Team Lead

  • 原田 イサドーラ

    株式会社ARISE analytics

    Customer Analytics Division, Economics Marketing Unit, スマパスマーケ戦略支援・ウェルネス支援 Team, Team Lead

  • 小林 稜

    株式会社ARISE analytics

    Business Development Division, Business Development Unit, Business Incubation Team

 

“勘と経験”に依存したマーケティング手法からの脱却

――まず、今回の取り組みの対象となった「auウェルネス」について教えてください。

石川氏 auウェルネスは、歩数、消費カロリー、体重の記録のほか、血圧・睡眠の計測、オンライン診療や服薬指導など、お客さまの日々の健康管理から医療までをサポートするトータルヘルスケアアプリです。KDDIは2022~2025年の中期経営戦略において、次なる成長領域の1つとしてヘルスケアを掲げており、auウェルネスはこの新たな事業領域でのお客さまとの最初のタッチポイントとしての役割を担います。現状でのサービスは基本無料となっていますが、オンライン診療などの有料サービスの提供も開始するなど、私たちヘルスケア事業推進部はauウェルネスを窓口とした新たな収益基盤づくりに取り組んでいます。

 

KDDI株式会社 石川 洋平 氏

 

高久氏 auウェルネスのサービスがスタートしたのは2020年11月です。以来、サービスの拡充とともに力を入れてきたのが、KDDIのオウンド媒体を活用した新規会員の獲得です。KDDIは約1,500万人が利用する有料会員サービス「Pontaパス(旧auスマートパスプレミアム)」やau公式ポータルの「auサービスToday」など、数多くのサービスを提供しています。これらの媒体のプッシュ通知などの機能を使ってユーザーにコンテンツを配信することで、auウェルネスの会員獲得を進めてきました。

ここでは、効果的な媒体の選定、ユーザーの健康への感度の見極め、ユーザーの心に響くコンテンツの開発などが重要になりますが、さまざまな施策にトライする中で私たちが直面した課題が、仮にコンテンツに対するユーザーの反応が想定した通りであったとしても、それはユーザーがコンテンツのどこに、どのように反応した結果なのか、私たちの企画の意図と一致しているのかまで掘り下げることができていなかったことです。こうした判断は過去の経験や勘を頼りに行っていたところもあり、ヘルスケア領域における今後の事業拡大を見据えて、属人的なマーケティング手法や意思決定から脱却しなければならないと考えるようになりました。

 

KDDI株式会社 高久 由佳 氏

データ分析による判断基準の“数値化”で会員獲得を加速

――ARISE analyticsに支援を要請した背景には、まさにこの課題認識があったということですね。

高久氏 勘や経験に依存した意思決定から脱却するためには、事実としてのデータを分析することで判断基準を数値化しなければいけません。この仕組みを実現できれば、担当者はデータに基づく迅速な判断を下せるようになり、期待した通りの成果が出なかった場合でも、何が悪かったのかの検証と改善が容易になります。

石川氏 ARISE analyticsはデータ分析の高い技術力でKDDI内でも評価されています。すでにKDDIグループのデータ基盤の整備をいくつも手がけており、その実績からパートナーとして最適だと考えました。私自身、あるプロジェクトでARISE analyticsの支援を受けたことがありますが、社内の打ち合わせや議論に積極的に参加してもらえるなどフットワークが軽く、その後も情報交換を続けていたこともあって、今回の支援の要請はいわば自然な流れでした。

下田(ARISE analytics) auウェルネスの会員獲得に向けた支援を打診されたのは20224月です。その後、7月からプロジェクトに着手し、20243月まで支援させていただきました。この過程でKDDIさまと議論を繰り返しながら一貫して取り組んだのは、会員獲得の効率化に向けて誰(Who)に訴求すべきかの「ターゲティング」、何(What)を訴求すべきかの「訴求内容」、どのように(How)訴求すべきかの「クリエイティブ手法」の3つを、PDCAサイクルを高速で回しながら最適化していくアプローチです。

 

株式会社ARISE analytics 下田 敬太

WHO×WHAT×HOWを最適化するためのPDCAサイクル

――データ分析を通じた新規会員獲得の施策とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

原田(ARISE analytics) まずターゲティング(Who)では、KDDIさまが保有する実際にauウェルネスに加入した会員を「正解」として学習した「auウェルネス ポテンシャルモデル」と、健康に対する関心が高いユーザーデータを学習した「健康スコアモデル」の2つの機械学習モデルを整備し、加入の可能性をターゲットごとに数値化しました。その上で、各媒体で配信したコンテンツがどれだけユーザーに確認されているかを測る「アクティブ化率」と、配信するコンテンツ/キャンペーンとターゲットとの相性を表す「反応率」を組み合わせて分析を行い、ターゲットを絞り込みます。最終的にポテンシャルモデルと健康スコアモデルのスコア上位の層で、ランダム配信と比較してそれぞれ3.5倍、3倍ものユーザーを捕捉することが可能になっています。

次の訴求内容(What)の改善で取り組んだのが、ユーザー目線でのauウェルネスの価値訴求です。それまでのキャンペーンでは、ポイント付与などのお得感を訴求するものが多かったのですが、それではヘルスケアアプリとしてのauウェルネス本来の価値が伝わりにくく、健康にあまり関心のない新規加入者はいずれ離反してしまいます。

そこで、何を訴求すれば捕捉率と定着率の向上につながるかのテストを繰り返して検証した結果、最終的に「健康への寄与」というシンプルな価値提案が最も効果的であることを突き止めました。実際、「あなたの歩数がプレゼントに変わる」というメッセージで実施したキャンペーンでは、新規加入者が劇的に増加しています。同時に、アプリの価値を理解して自分の生活に必要と判断したユーザーに加入してもらうことで、定着率も大きく改善しています。

最後のクリエイティブ手法(How)の改善では、コンテンツの文章やビジュアル、その配置、配色などに関するABテストを継続的に行い、得られた結果をコンテンツ最適化のガイドラインとしてまとめました。これにより、同じユーザーに複数回訴求しても既視感を感じにくくなり、コンテンツの効率的な再利用にもつながっています。

 

株式会社ARISE analytics 原田 イサドーラ

 

効率を上げる取り組みを説明した図

今回のプロジェクトでは、auウェルネスに加入した会員のデータを学習した「auウェルネス ポテンシャルモデル」と、健康に対する関心が高いユーザーデータを学習した「健康スコアモデル」の2つの機械学習モデルを整備し、ターゲットごとに加入の可能性を数値化した。

データ分析に基づく伴走型支援で顧客と新たな価値を共創

――プロジェクトでは苦労も少なくなかったのではないですか。

高久氏 施策にどれだけの効果があったかを示すのが、アプリのダウンロード数です。それだけにユーザーの反応が悪かった際は、ARISE analyticsと議論しながら日次で施策を見直すなど、プロジェクトは軌道修正の連続でした。ただ、そこで改めて実感したのが、これまで感覚的に捉えてきた情報を数値として可視化したことのメリットです。例えば、各媒体のアクティブ化率の算出です。

小林(ARISE analytics) アクティブ化率の算出では各媒体の会員数だけでなく、コンテンツ配信に必要なプッシュ通知の許可率、直近で送ったコンテンツの確認率なども分析に織り込み、「こうしたユーザーならメッセージを開いてもらえる」という期待値を算出します。この媒体別の期待値をもとに仮説を立て、結果が「何点以上なら有効」といったように合理的かつ迅速な判断を下せるようになっています。

高久氏 各媒体には独自のポリシーがあり、私たちが実施したいコンテンツ配信が認められないケースもありました。その際にもARISE analyticsによる媒体側のポリシーを踏まえたコンテンツ修正により、効果的な訴求につなげられています。現在は効果が見込めるコンテンツの配信手法がモデル化されつつあり、どう配信すべきかで悩む苦労は確実に減っています。

下田 ARISE analyticsはデータ分析の支援において、課題解決の方法をお客さまと一緒に探求する伴走型のアプローチで取り組んでいます。今回のプロジェクトもそうですが、これによりお客さまとともに新たな価値を共創できると考えています。

石川氏 当初の期待通り、ARISE analyticsの伴走型の支援、フットワークの軽さには本当に助けられました。意思決定の場に常に同席してもらって課題を共有できたことで、タイムリーな提案を受けながら成果につなげることができています。

 

株式会社ARISE analytics 小林 稜

約2年間の試行錯誤で会員数は100万人を突破

――auウェルネスの会員数は、すでに100万人を突破しています。これまでの成果を振り返っていかがですか。

小林 新規会員の獲得には、1年を通じて“波”があります。スマホの新製品発表が相次ぐ時期は会員を獲得しやすく、逆に真夏で暑さがピークの時期はウォーキングの企画は響かないといった具合です。そうした変動の中でデータを日次で追いつつ、低迷した数字を別の時期でどう取り戻すかも意識しながらデータ分析に取り組みました。

石川氏 プロジェクトを振り返ると、初期段階では何がユーザーに響くのかがわからず、一度は会員獲得が軌道に乗ったかと思えば、しばらくすると伸びが鈍化して、新たな施策を模索しなければならないなどの苦労もありました。ただ、こうした試行錯誤は会員数の増加として着実に実を結んでおり、2022年7月の時点で5万人だった会員数は、2024年6月には100万人を超えるところまで成長しています。

高久氏 ヘルスケア事業推進部は、まだ規模も小さく人員も十分とは言えません。その中でこの数字を達成できたのも、データ分析のプロであるARISE analyticsの高度な知見とアイデアの賜物だと考えています。

 

 

ARISE analyticsの分析支援による成果を表した図

KDDIのオウンド媒体を活用した新規会員獲得のPDCAサイクルを最適化しながら、2024年6月の時点で100万人超まで会員基盤の拡大に成功している。

 

――今後の展望についてお聞かせださい。

高久氏 プロジェクトの過程では、ARISE analyticsに今回整備した機械学習モデルの内製化の支援もお願いしました。今後も健康スコアモデルなどを活用しながら、引き続き新たな会員獲得を目指していきます。

石川氏 auウェルネスでは今後、有料サービスの提供を本格化させます。そこでは新規会員の獲得だけでなく、会員の退会防止も重要な課題となります。今回のデータ分析で培った知識や経験をそこでも生かしていきたいと考えています。一方、ARISE analyticsはこれからも私たちの頼れるパートナーです。データ分析で何か課題が発生した場合には、まっさきに相談して知恵を借りたいと考えています。

 

 

KDDI株式会社

従業員数
61,288名(連結ベース、2024年3月31日現在)
住所
東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号
ガーデンエアタワー
URL
https://www.kddi.com/
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