au経済圏の拡大に向けて、「データドリブン×アジャイル開発」で推し進めるau PAY マーケットのUX最適化プロジェクト

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※本記事の内容、所属部署名などは2025年2月の取材時点のものです。

日用品からファッション、インテリア、家電など豊富な品揃えのたくさんの商品やお店と出会える総合ショッピングサイトとして、成長を続ける「au PAY マーケット」。通信キャリア大手のKDDI株式会社とauコマース&ライフ株式会社が共同で運営するau PAY マーケットは、商品の販売だけでなく、au経済圏の拡大に向けた窓口としてもKDDIグループの中で大きな役割を担っています。
その魅力をさらに高めるために、auコマース&ライフが2023年4月に着手したのが、同社が保有する膨大なデータを活用してターゲットのペルソナを分析し、求められる機能やサービスをアジャイルに開発して顧客体験(UX)を高めていく「au PAY マーケット グランドデザインプロジェクト」です。本記事では、このプロジェクトが立ち上がった経緯やそこから生まれた成果、今後の展望について、同社の執行役員でサービス開発本部の本部長を務める小林正和氏と開発リーダーの菊川道一氏、またプロジェクトを一貫して支援してきたARISE analyticsのメンバーに話を聞きました。

 

  • 小林様トリミング-1

    小林 正和 氏

    auコマース&ライフ株式会社

    執行役員
    サービス開発本部
    本部長

  • 菊川様トリミング-1

    菊川 道一 氏

    auコマース&ライフ株式会社

    サービス開発本部
    プロダクト開発部
    副部長

(ARISE analyticsからの参加者)

  • 藤森さんトリミング

    藤森 隆文

    株式会社ARISE analytics

    Innovation & Growth Division, Service Growth Unit, UX Growth Team, Team Lead

    アクセンチュア株式会社
    ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ テクノロジーアドバイザリー プラクティス マネジャー

  • 小泉さんトリミング

    小泉 政裕

    株式会社ARISE analytics

    Innovation & Growth Division,Service Growth Unit,UX Growth Team

    アクセンチュア株式会社
    オペレーションズ コンサルティング本部 エクスペリエンス グロース ビジネス マーケティング

 

au経済圏の窓口として大きな役割を担う「au PAY マーケット」

――最初にauコマース&ライフの事業内容と、小林さまが統括されているサービス開発本部の役割について教えてください。

小林氏 auコマース&ライフは、総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」の運営を中心に、KDDIグループのeコマース事業の中核を担う企業です。私たちが一貫して取り組んできたテーマは、au PAY マーケットを窓口としたau経済圏の拡大です。au経済圏は、auの通信サービスやau PAYによるキャッシュレス決済など、au IDを使ってKDDIが提供する幅広いサービスの総称です。そのほかに、様々な会員特典を提供する月額制のサブスクリプションサービス「Pontaパス」もあり、顧客基盤の拡大と利便性の向上を図っています。

そのため、au PAY マーケットは特にauやUQ mobileのお客さまに真っ先に想起していただける魅力的なeコマースサイトであり続けなければなりません。その中で、au経済圏でより多くのトランザクションを生み出すための新機能やサービスの開発を担っているのが私たちサービス開発本部です。

auコマース&ライフ株式会社 小林 正和 氏

eコマース市場での競争の成否を分ける顧客体験(UX)の向上

――この数年のau PAY マーケットの運営、またeコマース事業を取り巻く市場環境について、どのように認識されていますか。

小林氏 eコマース市場には数多くの競合が存在します。同時に世の中のトレンドも急速に変化しており、私たちは多様化するお客さまのご要望にお応えしていかなければ、競争を勝ち抜いていくことができません。このようなビジネス環境の中でau PAY マーケットの魅力を高めていくためには、変化に追随できるビジネスのアジリティが不可欠です。

開発におけるアジリティの面では、伝統的なウォーターフォール開発からの脱却に向けて、Next.jsやBFF(Backend For Frontend)のアーキテクチャの採用によるシステム基盤の刷新に取り組んでいます。これにより、au PAY マーケットの画面や機能の更新作業が効率化され、より迅速なリリースが可能になっています。

一方で継続課題となっていたのが、こうした投資をいかにして流通額の拡大につなげていくかという点です。実際、「システム基盤が刷新された後も、au PAY マーケットのユーザーインターフェース(UI)はあまり変わっていない」という声が社内から聞かれました。
この状況の中で2023年の初頭に経営サイドからあらためて出されたのが「変化の激しいeコマース市場での競争を勝ち抜くためには、やはり顧客体験(UX)の向上を最優先に考えなければならない」という課題提示でした。

――常に快適な買い物体験が求められるeコマース事業において、UXは重要なキーワードの1つです。サービス開発本部では経営サイドからの課題提示をどのように受け止めたのでしょうか。

小林氏 お客さまとの接点となるフロント側のモダナイゼーションが遅れていることで、最も重要なUXの向上という成果を生み出せていないことを再認識しました。経営サイドが求めているのは、au PAY マーケットを利用するお客さまのペルソナやカスタマージャーニーに基づいてUX体験原則を再定義し、より大きなトランザクションを生み出すための機能を実装していくことです。
こうした課題認識から2023年4月にスタートしたのが、「データドリブン×アジャイル開発によるUI/UXの高度化」をテーマとした「au PAY マーケット グランドデザインプロジェクト」でした。

UXの再定義から効果検証まで、広範な知見を備えたARISE Analyticsとの戦略的パートナーシップ

――「au PAY マーケット グランドデザインプロジェクト」の推進にあたっては、戦略パートナーとしてARISE analyticsに支援を要請しています。この経緯についてお聞かせください。

小林氏 まず大きな評価ポイントして、当社も含めたKDDIグループ各社に対するARISE analyticsの数多くの支援実績があります。一般的にコンサルティングファームに支援を依頼する場合、事業の現状と課題を把握するためのヒアリングに数カ月の時間を要することが珍しくありません。その点、ARISE analyticsはすで当社の事業活動をよく理解していることから、具体的な施策を実践するまでの時間を大幅に短縮することができます。

またUXの向上という課題は、UIを改善するだけで解決するほど単純なものではありません。お客さまのペルソナやデータに基づくUXの再定義、求められる機能のアジャイルな開発・実装、その後の効果検証など、一連のステップが有機的に連携して初めて成果が生まれます。

こうしたプロジェクト全体の流れを一貫して担える人材が社内では十分でないこともあり、これらの知見をトータルに備えたARISE analyticsは戦略パートナーとして最適だと考えました。

――ARISE analyticsでは、このプロジェクトの支援をどのように進めていったのでしょうか。

藤森 ARISE analyticsがこのプロジェクトに参画した当初は、UXを中心にどのようにして新たな買い物体験をお客さまに提供していくかについての議論が行われていました。それ自体は正しいことなのですが、理想のUXを軸に施策を決定したとしても、それが本当にビジネスとして成り立つのか、開発のフィジビリティ(実現可能性)は考慮されているか、マーケティングの視点ではどうなのかなど、さまざまな課題に直面することが予想されました。

そこでARISE analyticsは、営業や商品開発、広告、マーケティングなど、au PAY マーケットに関わるあらゆる部門のご担当者さまに参画いただいたうえで、異なるKPI の観点からeコマースサイトとしてのあるべき姿や必要な機能について議論し、合意を形成していくプロセスの構築から支援させていただきました。

株式会社ARISE analytics 藤森 隆文

データドリブンのアプローチでau PAY マーケットのあるべき姿を可視化

――グランドデザインプロジェクトは、「ワイヤーフレーム作成」と「開発・効果検証」の2つのフェーズに大別され、さらに前者は「あるべきUX体験原則の策定」と「データドリブンなワイヤーフレームの策定」、後者は「画面詳細設計・開発」「効果測定・報告」のステップに分かれています。これらは当初から想定されていた進め方なのでしょうか。

小林氏 この進め方は当初から想定していたとおりです。UXを最適化するためには、利用可能なあらゆるデータに基づいたお客さまのペルソナやターゲット像の精緻な把握から入る必要があります。改善に取り組んだUIが本当にお客さまのUX向上に貢献しているかを判断するための、分析の仕組みも整えなければなりません。

プロジェクトを進めるにあたっては、ARISE analyticsにはリーダー級の人材を各プロセスに配置してもらいました。専門的な知見を備えたエキスパートを迅速にアサインしていただける点も、ARISE analyticsに支援を要請した理由の1つです。

小泉 各プロセスの支援内容について、最初の「あるべきUX体験原則の策定」では、auコマース&ライフさまが保有する膨大な定量データやVoC(顧客の声)などの定性データをお借りし、お客さまのペルソナやau PAY マーケットの改善点を当社のエキスパートの分析によって可視化しました。この段階で各種KPIもご提示しています。

続く「データドリブンなワイヤーフレームの策定」では、UX体験原則を画面に落とし込むために、より細かなデータを改めてご提供いただき、分析結果をもとにワイヤーフレームとして画面をご提案させていただいています。

「画面詳細設計・開発」において、実際の作業を行うのはauコマース&ライフさまのデザイン部門と開発部門です。その中で、私たちは出来上がったデザインとワイヤーフレームとの齟齬などを確認し、デザイン部門と連携して最終デザインを固めていきました。同時に、クリック時の画面の反応など、ワイヤーフレームでは詰め切れない細かな仕様なども決定し、開発を進めていただきました。

最後の「効果測定・報告」では、出来上がった画面がリリースされた後、ある程度データが収集された段階で実際の効果につながっているかの分析を実施しています。その結果をすべての関係者と共有し、再度の見直しが必要かを定例会で議論しながら、優先度の高い画面から迅速に改善サイクルを回していきました。

株式会社ARISE analytics 小泉 政裕

グランドデザインプロジェクトは「あるべきUX体験原則の策定」「データドリブンなワイヤーフレームの策定」「画面詳細設計・開発」「効果測定・報告」の4つのステップで構成されている。

アジャイル開発によって、効果検証、改善のPDCAサイクルを高速化

――「画面詳細設計・開発」のフェーズでは、アジャイル開発にも取り組まれています。この手応えについてはいかがですか?

菊川氏 私は開発の現場でリーダーを務めましたが、私も含めてほとんどのメンバーがウォーターフォール開発の経験しかなく、アジャイル開発は初めてのチャレンジでした。そのため、初期段階ではアジャイル開発を実践するためのチーム作りと、事業部門から要望されたUIを開発する作業を同時並行で進めていきました。アジャイル開発のサイクルが軌道に乗るまでには、ARISE analyticsからさまざまな支援をいただきした。

藤森 アジャイル開発は開発の現場だけで成り立つものではなく、開発部門と事業部門が連携しながら進めていく必要があります。今回のプロジェクトでも、ワイヤーフレームの構成要素を分解して、事業部門の意見も踏まえてau PAY マーケットのお客さまが求めるUXを実現するためには、どういった優先順位で開発すればいいのかといったプロセスのご提案をさせていただきました。新たな画面、機能の効果検証も含めたアジャイル開発のサイクルを組み立てることができたのも、auコマース&ライフさまの組織としての柔軟性、アジリティがあってこそだと思います。

菊川氏 ウォーターフォール開発との違いという点では、アジャイル開発によってチームとしての工数は増えるのですが、みんなで話し合ってすぐに開発を行い、クイックにリリースしていくという点では定量的な成果が出せたと思います。また、ウォーターフォール開発のように事業部の要望に従う受け身の姿勢ではなく、お客さまに新たな価値を提供するという目標に向かって主体的に動くことができたことは、これまでにない開発体験でした。

小泉 アジャイル開発が軌道に乗った後は、菊川さまのチームやUIデザイナーのみなさまと連携して、ダッシュボードを使ったデータドリブンな効果検証を繰り返しながら、改善点の特定、開発、リリースのPDCAサイクルを高速で回していきました。多いときは1週間の間で何度も新機能をリリースしていた時期もあります。

 auコマース&ライフ株式会社 菊川 道一 氏

UXの向上によって1カ月当たりの流通額を6,000万円増大 

――プロジェクト全体を通じて、ご苦労された点もあったのではないですか?

小林氏 グランドデザインプロジェクトのすべてのフェーズを考えると、経営層ほかさまざまな部門の社員が関係しますので、すべての関係者の意見を調整しながら、au PAY マーケットをどうすべきかの意思決定につなげていくところは一番大変でした。この点でもARISE analyticsは大きな貢献を果たしてくれています。

藤森 小林さまがおっしゃるとおり、関係者のみなさまの意見調整はプロジェクトの重要なポイントだったと思います。KPIが異なる部門間の意見をとりまとめるうえでは、ARISE analyticsは「UX向上のために何を最優先すべきか」というプロジェクトの方針からぶれることなく、各部門の統括の方々の判断を仰ぎながら合意形成に取り組みました。

小林氏 社内の各部門にはさまざまなKPIがあるのですが、お客さまはau PAY マーケットを1つのパッケージとして見ますので、今回のプロジェクトではあくまでお客さまの視点、UXの視点に立って議論を行いました。通常のROIとは違った視点で進めたという意味では、過去にあまり例のないプロジェクトだったのではないかと思います。

――プロジェクトは2024年3月で一旦完了とのことです。現時点での成果についてはいかがでしょうか。

菊川氏 プロジェクトでは、au PAY マーケットアプリのHOME画面の刷新、Web検索のお気に入り追加、クーポン自動適用/適用額表示など、さまざまな画面、機能の開発を行いました。なかでもHOME画面の刷新は、1カ月当たりの流通額を6,000万円高める成果につながっています。これもより高いUXをお客さまに提供できているからだと思っています。

また、アジャイル開発によって開発の生産性も飛躍的に高まりました。新機能を短いサイクルでリリースできるということは、それだけ早期に流通額を高めていけるということです。

アジャイル開発は社員の意識にも変化をもたらしています。小規模なチーム体制で風通しが良く、他部門の意見を聞く機会も増えています。このことが、最優先すべき課題は何か、何のための開発かといった、より幅広い視点で物事を考える意識変革につながったと感じています。

小林氏 今回のプロジェクトでは、並行してクリエイティブルールの整備にも取り組んでいます。20241月に刷新されたauのブランドアイデンティティを踏まえて、au PAY マーケットをどうデザインすべきかのルールです。例えば、auが運営する各種サービスで展開する販促キャンペーンのバナーなどは、すべて新たなルールに則ってデザインしています。このことはau PAY マーケットのUX 向上にとどまらず、auブランドの統一性、一貫性にも関わることですので、KDDIグループからも高く評価されています。

コア層のロイヤルティ強化に向けた新たなプロジェクトが進行中

――最後に、au PAY マーケットの今後の展望についてお聞かせください。

小林氏 すでに「au PAY マーケット グランドデザインプロジェクト」を発展させる形で「UX discoveryプロジェクト」が新たに動き始めています。これはお客さまのペルソナの解像度をさらに高めて、より高度なUXを提供していくための活動です。具体的には、お客さまとの接点となるフロントの部分で新たなページを立ち上げて、これまでとは異なるアプローチでコア層となるお客さまのロイヤルティを高めて、そこからの波及効果を追求していこうと考えています。

KDDI20242月にコンビニエンスストアチェーン大手のローソンさまと資本業務提携しましたが、Pontaポイントをハブとしてローソンさまの実店舗と連動した新たな買い物体験を創出していくこともアイデアの1つです。

菊川氏 私はUX discoveryプロジェクトでも開発の役割を担うことになりますので、新しいコンセプトでどういうページを開発していくかをARISE analyticsとも話し合っているところです。この新たなプロジェクトでも、アジャイル開発の知見は存分に生かしていけると思います。

小林氏 外部のパートナーと一緒に仕事をするのであれば、お互いが達成感を感じられる成果を目指していきたいです。ARISE analyticsは、会社の方針や判断材料となるデータを提供すれば、具体的な成果を見据えた優れた提案を返してくれますので、私自身にとっても大いに参考になります。こうした提案を積極的に行ってくれるコンサルティングファームは数少ないのではないでしょうか。

どのような仕事であっても、成果を生み出すのはやはり「人」の力です。ARISE analyticsとのパートナーシップでプロジェクトに取り組むことで、当社の人材育成や組織文化の面でも好影響が生まれていると感じています。今後もお互いにリスペクトしあえる信頼関係の中で、さまざまな課題にチャレンジしていきたいと思います。

 

KDDI株式会社

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61,288名(連結ベース、2024年3月31日現在)
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東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号
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