事例

AI、データ分析を組み合わせた独自のドローンビジネスで さまざまな業界の業務課題、社会課題の解決に貢献
※本記事の内容、所属部署名などは2024年11月の取材時点のものです。
中期経営計画(2022-2025年度)における事業戦略として「サテライトグロース戦略」を掲げ、顧客との接点である通信基盤を生かして、DX、金融、エネルギーといった成長領域で付加価値サービスの創出に注力するKDDIグループ。この中でモバイル通信との融合によってさまざまな業界の業務課題や社会課題を解決する新たなサービスとして期待を集めているのが「ドローンビジネス」です。
設備の点検・監視、工事現場の測量、物流など、活用シーンが拡大するドローンビジネスを通じて、KDDIは顧客のどのような課題解決、また社会貢献を目指しているのか。ドローンを使ったモビリティ市場の開拓を担うKDDIスマートドローン株式会社の代表取締役社長を務める博野雅文氏と、同社の設立当初から戦略パートナーとして事業に伴走してきたARISE analyticsの萩原隆夫に話を聞きました。
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博野 雅文 氏
KDDIスマートドローン株式会社
代表取締役社長
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萩原 隆夫
株式会社ARISE analytics
DX Strategy Division, Vice Division Director
アクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部
コンサルティンググループ シニアマネージャー
モビリティ市場の開拓を担う新たなドローンビジネス
――KDDIスマートドローン株式会社は、2022年に設立された新しい事業会社です。まず、御社の事業内容についてお聞かせください。
博野氏 KDDIスマートドローンは社名の通り、KDDIグループの中でドローンビジネスを専門に手がける事業会社です。現在はモバイル通信や運航管理システム、クラウドなど、ドローンの遠隔自律飛行に必要なツールをパッケージ化した「スマートドローンツールズ」、設備の点検や監視、測量などでのドローン活用を一気通貫で支援する「用途別ソリューション」、国家資格の取得やドローン運用の専門知識の習得をサポートする「KDDIスマートドローンアカデミー」の3つを事業の柱としてサービスを展開しています。
もともとKDDIでドローンの事業化に向けた検討がスタートしたのは2016年でした。当時はスマートフォンの普及が一段落して、モバイル通信をスマートフォン以外でどのように活用していくかが事業課題となっていました。同じ時期に総務省がモバイル通信のドローン活用に向けた「実用化試験局」の制度を立ち上げ、KDDIがその認可を受けたことが契機となり、スマートフォンに続く新たな開拓市場として「モバイル通信×ドローン」の事業化に着手しました。
以降、KDDIではドローンの運航管理システムの開発を進めるとともに、各種の実証実験によってオペレーションのノウハウを蓄積してきました。そして、より空のモビリティビジネスを加速させるべく設立されたのがKDDIスマートドローンです。
KDDIスマートドローン株式会社 代表取締役社長 博野 雅文 氏
AI・データ分析の高度な知見を備えたARISE analyticsとの戦略的なパートナーシップ
――新規事業であるドローンビジネスを推進する上では、乗り越えなければならない課題もあったと思います。その中でARISE analyticsにはどのような経緯で支援を要請するに至ったのですか。
博野氏 ドローンはカメラやセンサーなどと組み合わせることにより、多くの業界で深刻化する人手不足の解消、また人々が安心して暮らせる持続可能な社会の実現に向けた大きな可能性を秘めています。
しかし、どのような新規ビジネスでも収益化は一筋縄ではいきません。KDDIでは従来、国や自治体のプロジェクトを受託事業の中心に据えてきたこともあり、ドローンビジネスの裾野を民間に広げていくことは新たなチャレンジでした。戦略立案に関するノウハウ、お客さまに対する提案力、またドローンで収集したデータをどのように活用して新たな価値を創出していくかなど、課題は山積みでした。
これらの課題を解決するためには、データ分析などの高度な知見を備えた戦略パートナーの存在が不可欠だと考え、支援を要請したのがARISE analyticsでした。ARISE analyticsとはそれまでも別のプロジェクトでご一緒することがあり、経営コンサルティングやAI、データ分析といった私たちのビジネスを補完する高度な知見を備えていることは理解していましたので、まさに最適なパートナーでした。
萩原 ドローンビジネスのお話をいただいた際は、率直に光栄でした。ただ、当初は私たちもドローンビジネスに関してはまったくの素人で、まずは当社が強みとするデータ分析基盤のアーキテクチャ設計などのご支援から始めさせていただきました。その後、お客さまとの商談の場に同行したり、共同で提案内容を練ったり、ドローンとデータを組み合わせてどのような価値を生み出せるかについての理解を深めていきました。
さまざまなご支援を通じて驚かされたのは、KDDIスマートドローンさまの意思決定のスピードです。各業界の課題をいち早くキャッチして、即座に対応に乗り出します。この動きに遅れることなく、KDDIスマートドローンさまと一体となって伴走型のご支援を提供していくことが、私たちARISE analyticsのミッションです。
株式会社ARISE analytics 萩原 隆夫
ドローンとデータ分析の組み合わせによるプロセス改善という付加価値
――ドローンを活用したこれまでの具体的な取り組みについて教えてください。
博野氏 代表的な取り組みとして挙げられるのが、KDDIが管理する通信鉄塔の点検業務におけるドローン活用です。これはドローンで撮影した画像をもとに、ボルトのゆるみや接合部のサビなどをチェックするもので、点検業務の効率化、コスト削減、さらに作業者の安全確保への貢献が評価され、現在は全国の通信鉄塔の点検でこの手法が採用されています。
しかし、ここに至るまでには課題もありました。ドローンを使えば人が目視でチェックする作業よりも点検は早く完了するのですが、単にドローンを導入するだけでは全体としてコスト増になります。この状況を打開したのが、ARISE analyticsの提案によるドローン活用を前提とした新たな点検プロセスの構築です。
萩原 具体的には、一連の点検プロセスを可視化し、業務プロセスを変更することや、取得したデータ活用、AIによる画像データの解析可否等含め、それまで人が行ってきた不具合評価や報告書作成などの作業を自動化する検討を行い、そこで見込まれる効率化の効果を数値で示しました。これにより、ドローンが人の作業を代行するだけでなく、ドローンが収集したデータ分析から生まれる付加価値を認めてもらうことができました。
KDDIの通信鉄塔の点検業務においては、人による作業とドローンを組み合わせたハイブリッド点検によって、作業員の稼働減、報告書作成の効率化などの成果が生まれている。
博野氏 この事例は、ドローンとデータ分析を組み合わせることで、プロセスの改善という新たな価値を生み出せることを示す好例でした。同様の手法によって、東北電力さまから送電鉄塔の点検業務に関するデータ分析含めた案件を進めています。この案件では、これまで人手で行っていた撮影データのPCへの取り込みから、画像のAI解析による異常の検知、点検調書の作成、その後のデータ活用までを一気通貫で自動化し、大幅な効率化が実現しています。
萩原 いずれの案件においても一番苦労したのは、ドローン、AI、データ分析を組み合わせた手法をいかにして実際の現場の業務プロセスに落とし込んでいくかという点です。現場の作業員の方は、それまでの経験値の中でサビ以外のいろいろな不具合を目視でチェックしています。サビの検知といった部分的な自動化だけでは業務全体の改善につながらないケースは往々にしてありますので、本当にドローンやAIで解決すべきなのか、別の手段での解決がベストなのではないかといったことも考えなければなりません。そこが一番難しいところです。
博野氏 当社のビジネスで何よりも大切なのは、お客さまの現場を広く、深く理解することです。お客さまの現場が抱える課題こそが、私たちの提案活動の出発点です。例えば、水中ドローンを使って海洋調査を行っている企業では、目的地の沖合までドローンをどうやって搬送するかで頭を悩ませていました。ボートを使って搬送していては、大きなコストと時間を要するためです。
そこで当社が提案した解決策が、別のドローンを使った水中ドローンの搬送です。この手法であれば搬送のコストと時間を大きく削減できるだけでなく、上空モバイル通信によって陸地からでも調査を実施することができ、オペレーションは飛躍的に効率化します。
お客さまの現場に寄り添って、「叶えるために飛ぶ。」を実現
――ARISE analyticsのこれまでの支援をどのように評価されていますか。
博野氏 本格的なパートナーシップがスタートした当初を振り返ると、やはりお互いに試行錯誤の連続でした。しかし、現在は当社のドローン活用のノウハウとARISE analyticsのデータ分析の強みを組み合わせた提案が着実にモデル化しつつあり、それが新たな案件の受注にもつながっています。
ドローン活用の可能性は、建設現場や農業も含めたあらゆる業界の現場に潜在しています。今後、事業を拡大していく上での基本方針は、当社のミッションでもある「叶えるために飛ぶ。」、すなわち現場の願いを叶えるためのドローン活用です。
その意味で、ARISE analyticsは常にお客さまの現場に寄り添って課題を明らかにし、同じ目線で改善に向けた提案を行っていけるパートナーだと思っています。
萩原 さまざまなプロジェクトを通じて、お客さまの現場と向き合うことの重要性をあらためて学ばせていただきました。ドローンは大きな可能性を秘めている一方、現場に深く入らないと本当の解決策は見えてきません。今後もKDDIスマートドローンさまと共にお客さまの現場に寄り添いながら、データ分析の知見で事業の拡大に貢献していければと考えています。
新たな社会インフラとしてのドローンが実現する未来
――ドローンビジネスの今後の展望についてお聞かせください。
博野氏 温めているアイデアはいくつかあります。その1つとして現在開発を進めているのが、設備監視を目的としたドローンと固定カメラを組み合わせたソリューションです。ドローンを使った監視では定期的な飛行で生じるコストが課題となりますが、この新たなソリューションでは高所の固定カメラで広範囲の監視を行い、異常が検出された際にドローンが現場に急行します。これにより、監視コストの削減、また最近多発している銅線ケーブルなどの盗難対策、警備員の方のリスク低減などにつながります。実際、栃木県小山市にあるKDDIの太陽光発電設備では、このソリューションを使って夜間監視を行い、成果を上げています。
また具体的なサービスとして、自動充電ポート付きドローン(ドローンポート)を活用した遠隔運航サービスの提供を2024年11月から開始しました。このサービスでは、お客さま側でドローンポートを設置する場所さえご提供いただければ、初期投資や専門的な知識を必要とせず、自社の業務で手軽にドローンをご活用いただけます。
このドローンポートについては、コンビニエンスストアチェーン大手のローソンさまの店舗を活用した実証実験も進めています。この取り組みは、ローソンさまの店舗にドローンポートを設置して物流の中継拠点とすることで、個人宅を含めた新たな配送の仕組みを実現し、人手不足が深刻化する物流業界の課題解決やCO2排出量の削減などにつなげていくものです。この仕組みが全国1万4,000のローソンさまの店舗に拡大すれば、災害時における被災地への物資の輸送や情報収集といった面でも社会貢献を果たしていくことができます。
このほか、KDDIは2024年5月に米国のSkydio社と資本業務提携を締結しました。ドローンの自律制御技術のグローバルリーダーとして知られる同社が提供する最新の機体であるSkydio X10は、KDDI独自のドローン運航管理技術と組み合わせることで、災害時の対応を含めたさまざまな社会課題を解決することができます。2025年以降は、このSkydio X10に対応したドローンポートの整備も進めていく計画です。
KDDIは2024年5月に米国Skydio社と資本業務提携を締結。同社の最新の機体であるSkydio X10は、可視光と赤外線を用いたナイトセンスを搭載し、自律飛行による暗所での夜間監視など、さまざまなユースケースに対応できる。
萩原 現在取り組んでいる通信鉄塔や送電鉄塔の点検業務にとどまらず、ドローンはさまざまな業界の労働集約型の業務を抜本的に変えていく手段にもなり得ます。そうなれば、これまでの規制やルールを塗り替えるような新たな世界が見えてきます。こうした未来の創造につながるKDDIスマートドローンさまの事業に伴走できることは、とても意義のある経験です。
博野氏 ドローンの活用に向けてKDDIが進めている環境整備が日本全国で進めば、ドローンは電気やガス、水道と並ぶ社会インフラの1つとして位置づけられるようになるはずです。この新たな未来の実現に向けて、当社は引き続きARISE analyticsとのパートナーシップを通じて、安定的な事業の成長と社会的価値の創造の両輪でさまざまな施策を推進していきたいと考えています。

KDDI株式会社
- 従業員数
- 61,288名(連結ベース、2024年3月31日現在)
- 住所
- 東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号
ガーデンエアタワー - URL
- https://www.kddi.com/