MESHSTATSアプリケーションアイデアソン2024参加記

はじめに

Customer Analytics Divisionに所属するデータサイエンティストの森智之と、今井裕貴です。

私たちは、弊社が開発しているOMO(Online Merges with Offline)データを集約したプラットフォームを活用し、KDDIグループが提供するサービスのユーザの位置情報分析、利活用を推進しております。今回は、一般社団法人世界メッシュ研究所様からお声がけいただき、社内で有志を募り、MESHSTATSアプリケーションアイデアソン2024に参加しました。2チームで参加し、1チームは最優秀賞を受賞したので、参加記として紹介します。位置情報分析やメッシュ統計に興味のある方は、位置情報分析でどんなことをしているか、メッシュ統計の考え方などを知っていただけるのではと思います。

アイデアソンの概要

本アイデアソンは、MESHSTATSに搭載が可能なアプリケーションアイデアを募集するイベントです。MESHSTATSとは、日本産業規格地域メッシュコード(JIS X0410)の独自拡張である世界メッシュコードに基づくDIaaS(Data Infrastructure as a Service)です。世界メッシュ統計を全世界規模で取り出し、分析、再集計を行う機能を有します。(MESHSTATS – 一般社団法人世界メッシュ研究所 (fttsus.org))

「MESHSTATSで社会課題解決を目指す」を共通テーマに、「デコ活」、「IoT・センサー」、「消滅可能性都市」、「生態系・生物多様性」の4つのテーマと自由テーマでアイデアの募集がされました。その後、エントリー申込者を対象として、5月25日に発表会&表彰式が開催されました。発表会当日は12チームが参加し、各々のチームがアイデアのプレゼンを行いました。

参加2チームのアイデア

森チーム:(最優秀賞受賞)

森チームは、データサイエンティスト越智朋子さん、今井省吾さんで参加しました。

選んだテーマ

選んだテーマは、「生態系・生物多様性 × MESHSTATS」です。テーマの概要は、「生態系ならびに生物多様性の保全の概念が、 「住みたい」まちの指標の1つとなるアイデアを募集する」というもので、近年の環境問題への意識の高まりから、住みたい街の指標として生態系の保全に関する指標を作成するというものでした。

アイデア概要

今回は、自然データと人流データを組み合わせることで、「そこに住んでいる人がどの程度自然に触れているか」ということがわかる指標を作成することにしました。このアイデアに至った経緯としては、普段KDDIの人流データを分析していることから、人流データを何かしらのデータに掛け合わせることで、我々なりのバリューが出せるのではないかと考えたためです。

 

具体的なアイデアとしては、衛星画像の画像データをメッシュごとに分割し、各メッシュにおける緑の割合を数値化した後に、メッシュに紐づく人の移動滞在ログを掛け合わせることで、その人がどの程度自然に接しているかという”緑リーチスコア”を算出するというものです。下記スライドでは大まかなメッシュ粒度になっているものの、細かいメッシュで実現することで、家の身近な街路樹などもとらえられるのではないかと考えました。

工夫ポイント

今回のアイデアソンはMESHSTATSというアプリケーションへの搭載を前提としていたため、メッシュで可視化するだけで意味をもつ指標を作成する必要があると考えたのが工夫ポイントだったと思います。普段の業務から位置情報を分析して、人の興味関心を推定するといったことをしているため、データに意味を持たせるということを強く意識しました。作成した指標については、その妥当性を問われることが多いため、なるべくシンプルな計算式で表現でき、説明性の高いものとしたことが、受賞につながったのかもしれません。また、ここでは割愛しますがビジネスモデルやユースケースについても言及し、実際の活用イメージがわくようにしたことも工夫ポイントです。

今井裕貴チーム

今井のチームは、データサイエンティストの中尾さん、小山さんの3人で参加しました。

選んだテーマ

私たちのチームは、「消滅可能性都市×MESHSTATS」をテーマに選びました。消滅可能性都市とは、少子化や人口移動に歯止めがかからず、将来、消滅する可能性がある自治体です。テーマの概要は、消滅可能性都市に着目して、様々な変化を地図上に可視化することで、消滅の回避や生活水準の向上に繋がらないかを検討するというものでした。

アイデア概要

私たちのチームでは消滅可能性都市に関連して、「買い物弱者」に着目して現状の可視化、課題解決アイデア検討を進めました。「買い物弱者」とは、人口減少や少子高齢化等を背景とした流通機能や交通網の弱体化等の多様な理由により、日常の買物機会が十分に提供されない状況に置かれている人々を指します。買い物弱者の中心層は、気軽に買い物に行くのが難しい高齢者といわれています。年々、その数は増加しており、今後も増加する見込みです。私が所属する位置情報分析チームでは、KDDIの位置情報データと小売店を含む全国の施設情報を網羅したマスタデータと掛け合わせた分析を日々行っており、本課題に取り組みやすいと考えました。

買い物弱者問題については、行政・民間事業者・市民(住民)の3者間で、取り組まれていますが、主に食品に関する課題だけに着目されていることや、宅配事業のみで採算を取ることが困難であることが過去事例調査を通して分かりました。

そこで、私たちのチームでは「食品以外の生活必需品・サービスにおける買い物弱者のマップの可視化」や、「配達円滑化のための他業種とのコラボが可能な地域マップの可視化」といったアイデアを提案しました。

下記スライドでは、現状把握のために食品小売店に関する買い物弱者マップを可視化しています。

買い物弱者指数の計算には、メッシュ単位での高齢者数/食料小売店としました。1つの食料小売店にどれくらいの高齢者の需要があるかを表し、需要過多(=供給不足)である場合、その地域で買い物弱者が多いとみなしています。どのような指標を作成するかは議論の余地がありますが、今回はシンプルな指標としました。

買い物弱者問題解決に貢献するアイデアの1つである運送業とコラボを考えました。他の配達物を配達する際に、買い物弱者への食品や他商品を配達できないかというアイデアです。ここでの運送業は、宅配便以外にも、新聞配達や配達クリーニングなど、より地域に根差した運送も行う業種も想定しています。

そのようなコラボが可能な地域を探すために、買い物弱者指数と運送業拠点数を掛け合わせた指標を考えました。買い物弱者指数が高いかつ運送業拠点指数が高いところは、コラボがしやすいと言えます。

(最近、運送業の方々もとてもお忙しいので、コラボできる余裕はないかもしれませんが、、)

工夫ポイント

アイデアソンという形式上、斬新なアイデアを提案しても、具体実現性が低くなりがちという懸念がありました。そのため、実現可能性を高めるために、実際のデータを用いた可視化を行ったり、MESHSTATSを含めた行政・民間・住民の連携を意識したビジネスモデルを検討したりするなどの工夫を行いました。新規性のあるアイデアと実現可能性のバランスを取るのが困難なポイントでした。

終わりに

アイデアソンに参加させていただき、日々の業務で培った知見を社会課題の解決に役立てることができ、大変勉強になりました。また、アイデアソンで生まれたアイデアを具現化するプロセスを通じて、商圏分析や立地選定などの業務に応用できる可能性を見出すことができ、有意義な経験となりました。

受賞した森チームのアイデアは、実際のMESHSTATSにアプリ搭載に向けて、一般社団法人世界メッシュ研究所さんと検討を進めようという話が上がっています。

最後にARISE analyticsでは位置情報を活用してデジタルマーケティングや商圏分析などを行っています。私たちと一緒に位置情報分析を推進したい方はこちらのページからご連絡お待ちしております。皆様からのご応募を心よりお待ちしております!

【参考】アイデアソン主催組織

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