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MARKETING
SOLUTION
マーケティング事例

CASE STUDY 顧客体験を変革するデータ活用事例
独自のレコメンド基盤でお客さまに
最適なショッピング体験を提供

※この記事は2022年3月2日に日経クロステックに掲載されたものを許可を得て転載しています。
所属部署名は当時のものとなります。

デジタルマーケティングの基本は、データを最大限に生かしてユーザー向けにカスタマイズされた質の高いサービスを提供することだ。KDDIグループの総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」は、2018年にデータ基盤の刷新を決意。その開発をARISE analyticsに依頼した。データに基づく高性能なレコメンドエンジンを開発し、高い成果につなげている。開発に携わった4人のキーマンが、開発の特徴や経緯について語った。

データの活用基盤を刷新高性能なレコメンドを実現

山田 豊氏(以下、山田) 「au PAY マーケット」は「au Wowma!」を前身として発展してきた総合ショッピングサイトです。ポイント還元率が高く、またPontaポイントを1.5倍で利用いただけるなど、お得なショッピング体験を提供しています。

auコマース&ライフ株式会社 執行役員 サービス本部長 山田 豊 氏

より多くのお客さまにご利用いただき、リピーターとなっていただくには、データに基づく効果的なマーケティングが不可欠です。その基盤づくりが、当社の中で課題となってきました。サイトへの集客に必要な膨大なデータを整理、活用するための基盤が不十分だったのです。​​​​​​​

2018年ごろ、それまで使っていたデータ基盤を思い切って刷新しようという話になり、新たな基盤の開発をARISE analyticsにお願いしました。ARISE analyticsは技術力に定評があるのはもちろんですが、KDDIグループが提供する金融やエンタメなど様々なサービスのデータ基盤を手掛けていたことから、開発をお願いするのに最適と判断したわけです。

株式会社ARISE analytics Marketing Solution Division Director
アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部AIグループ シニア・マネージャー 桝本智志氏

桝本 智志氏(以下、桝元) 「au PAY マーケット」は大きなショッピングサイトですから、商品とユーザーの膨大なデータがあります。これをいかに高速に処理し、お客さまの興味により強くマッチする商品をレコメンド(推薦)できるか。そのデータ基盤の開発が、今回の目標となりました。

それまで使われていたデータ基盤は、業界でも名の知れたソリューションです。しかし、いくつか課題がありました。まず、品質の高いレコメンドは可能でも、対象となる商品が限られます。例えば、新商品やニッチな商品はレコメンドされにくいという課題がありました。私たちは、新商品が投入された翌日からすぐにレコメンドできる仕組みを目指しました。

また、カテゴリーによってレコメンドの出し方を変えたり、条件によっては少し離れた分野の商品を提案するなど、レコメンドの自由度を高める必要があると考えました。その方が高度にカスタマイズされたショッピング体験を提供でき、良い商品と出会いやすくなります。私たちは、この基盤をカスタムメイドで開発することに決めました。

株式会社ARISE analytics Marketing Solution Division 野尻 雅音 氏

野尻 雅音氏(以下、野尻) 開発を進めていくにあたり、まず、データ量の多さに苦戦しました。それぞれの商品に対して似た商品をいくつかレコメンドするのですが、膨大な数の商品が掲載されているので、全商品×全商品とすると大変な計算量になります。最初に開発したアルゴリズムはその計算に丸2日ほどかかりましたが、アルゴリズムの最適化と並列分散処理などにより、8時間ほどで計算できる性能を実現しています。

岩永 朋樹氏(以下、岩永) 処理の高速化にメドが立ってくると、今度はレコメンド内容の品質向上が課題となりました。これも容易ではありません。

株式会社ARISE analytics Marketing Solution Division 岩永 朋樹 氏

例えば家電製品や食品のような商材は、商品説明がしっかりしています。メーカーが提供している製品仕様が載っていて、商品の特徴に関する詳しい説明がある場合が多いのです。しかしDVDや書籍のようなエンタテインメント系の商品では、タイトルと著者名しかないなど、情報が少ないことがよくあります。そこで、インターネットから広く商品情報を収集して補完する仕組みを加え、レコメンドの精度を上げていきました。

このような開発を経て、新開発のデータ基盤における「レコメンドによる商品のクリック率」を旧来システムより10%も向上させることができました。

山田 サイトの規模感からすると、10%の向上は非常に大きなインパクトがあります。

課題を共有して顧客に寄り添う技術とコンサルの掛け算が強み

山田 今回はレコメンドエンジンを中心に開発していただきましたが、その効果は非常に高いです。ARISE analyticsの強みは、分析やアルゴリズムの技術、プロダクト開発に関する豊富な知見と実績だけではなく、当社の事業課題を深く理解して、具体的で実のある提案をしてくれるところにあると思っています。

桝本 そう言っていただけると本当にうれしいです。ありがとうございます。当社は、単にお客さまから依頼されたものを納品する分析会社ではありません。最大の特徴は、お客さまの課題を正しく理解し、目指すべき方向を一緒に考え、伴走しながら課題を解決していくことにあります。データサイエンス力とエンジニア力だけではなく、そこにコンサルティング力を掛け合わせて、お客さまの課題解決につながるソリューションを提供できることが最大の強みと考えています。

岩永 当社では多くのデータサイエンティストが活躍していますが、データ分析だけではなく、アルゴリズム設計やソリューション開発、基盤構築、それらに必要なデータ・ガバナンスなど、様々な分野に強みを持つ専門家がいます。それらの知見を集結させて、データから最大限の効果を引き出します。

野尻 KDDIグループは様々なサービスを提供する大きな企業群なので、領域によってデータの扱い方に違いがあります。それらに対してガバナンスを利かせた状態を保ち、チーム力を生かして当社にしかできない最適なシステムを開発できていると感じています。

さらなるデータ活用で「au経済圏」の強みを生かす

山田 「au PAY マーケット」はモール型といわれるショッピングサイトです。出店者さまとお客さまの出会いを向上させていくことが、サイトの魅力や独自性につながります。データのさらなる活用によって、お客さまがワクワクするような体験を提供できるかどうかが勝負です。

株式会社ARISE analytics Customer Analytics Division データサイエンティスト 横田 健太郎 氏

桝本 auの巨大な経済圏を生かし、ショッピングだけでなく他のサービスに対してもしっかり対応していきたいと思っています。

山田 そうですね。ARISE analyticsと実現したいことは、まだたくさんありますよ。

岩永 今回のような大きなシステム開発は難しさもありますが、試行錯誤しながら作り上げていく喜びがあります。データ活用をさらに進め、高品質なサービス提供を実現していきたいです。

山田 私もそこに期待しています。「au PAY マーケット」の武器は、auの経済圏を生かしてビジネスができることです。以前のシステムは、活用できるデータが限られていました。ARISE analyticsはKDDIグループが持つデータをよく把握しており、より広範囲なデータ活用を可能にしています。各社との調整も含めてお願いできるので、非常に助かります。

桝本 今後も御社と共に「au PAY マーケット」をより良いサイトにして、お客さまがワクワクする体験をご提供できるようご支援してまいります。